
リサーチ
食物カロチノイド摂取量は、中高年の男性のメタボ リック
シンドロームの低い罹患率と関連している
Ivonne Sluijs, Joline W. J. Beulens, Diederick E.Grobbee, and T. van der Schouw
医療科学&初期医療Juliusセンター、ユトレヒト大学医療センター、3508 GA
ユトレヒト、オランダ
要約
カロチノイドは抗酸化特性を持っている。食物カロチ ノイド摂取量とメタボリックシンドロームとの関係については殆ど知られていない。我々は、食物カロチノイド摂取量がメタボリックシンドロームやメタボリッ クシンドロームの危険因子と関連しているかどうかを調べた。我々は、40-80歳の374人の男性について集団ベースの断面調査を行った。β −カロチン、α−カロチン、β−クリプトキサンチン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチンの摂取量は有効と認められているFFQ(食物摂取頻度調査票)を使って概算した。メタボリックシンドロームの存在 は、空腹時血清グルコース、トリグリセリド、HDL-コレステロール濃度、ウェスト周囲、収縮期と拡張期 血圧を使って決定した。メタボリックシンドロームは22%の男性に存在した。交絡因子の調節後、全カロチノ イドとリコピンの摂取量はメタボリックシンドロームの存在と逆相関関係にあった[相対危険度(RR)四分値4対四分値1(95%CI)はそれぞれ0.42(0.20-0.87), 傾向検定におけるP値0.02; 0.55(0.28-1.11), P値0.01]。β−カロチンについては、摂取量のそれぞれの四 分値は第1の四分値に比べてリスクの減少が観察された[RR四分値4対四分値1(95%CI)0.58(0.33-1.02)]。全カロチノイド、β−カロチン、α−カロチン、リコピンのより高い摂取量はより低いウェスト周囲、内臓と皮下の脂肪量と関連していた。リコピンのより高い摂取量はより低い血清トリグリセリド濃度と関連していた。結論では、中高年の男性においては全カロチノイドの摂取量、主としてβカロチンとリコピンの摂取量はメタボリックシンドームのより低い罹患率とより低い程度の肥満と血清トリグリセリド濃度と関連していた。序文
ヒトの食事の中のカロチノイドは主として野菜と果物 から得られ、より少ない量がパン、卵、飲物、脂肪、油から得られる。40以上のカロチノイドがヒトの食事の中で消費される が、β−カロチン、α−カロチン、β−クリプトキサンチン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチンは主として血清の中にある(1)。地中海型の食事のように果物と野菜の多い食事は、2型糖尿病のようないくつかの慢性疾患から守るかも知れない(2)。酸化ストレスは2型糖尿病の病理生理学の一因に なっている(3)。カロチノイドは強い抗酸化特性を持っていて、 果物や野菜とこれらの疾病の間の保護関係を説明でき るであろう(4)。いくつかのカロチノイドがレチノールに変わること ができるような他のメカニズムも又関与している可能性がある(1)。実際、観察調査はカロチノイドと心血管の健康(5)や2型糖尿病(6-10)との間の逆相関関係を示したが、結果は必ずしも一致 していなかった(5, 11-14)。
代謝異常のクラスタリングであるメタボリックシンドロームは、心血管疾患と2型糖尿病を発現させるリスクを増大する(15)。いくつかの調査は、地中海型食事とメタボリックシンドロームの間の逆相関関係を示した(16)。しかし我々の知る限り、メタボリックシンドロームが食物カロチノイドとの関連で調査されたことはなく、2度だけ血清カロチノイドとの関連で調査された(17,18)。両方の断面検査は血清カロチノイド濃度、メタボ リックシンドロームとその個々の構成要素の間の逆相関関係を報告した(17,18)。
カロチノイドとメタボリックシンドロームの関連を更に調査するために、我々はオランダで無関係に生活している374人の中高年の男性について、食事による6つのカロチノイドの摂取量とメタボリックシンドロー ムやメタボリックシンドロームの危険因子との関係を断面的に調べた。
結果
カロチノイドの平均摂取量は〜10mg/日であった。β−カロチン、リコピン、ルテインが大半を占めた。メタボリックシンドロームは22%の男性に存在した。カロチノイドの摂取量が増えると、メタボリックシンドロームの存在、現在の喫煙者、平均年齢、アルコール飲料の消費、BMI、ウェスト周囲、内臓と皮下の脂肪量は減ったが、ビタミンCや食物繊維の平均摂取量と高等教育を受けた男性の割 合は増えた(表1)。メタボリックシンドローム. 我々は、より高い全カロチノイドの摂取量とメタボリックシンドロームの存在との間の有意な逆相関関係を観察した;多変量調節したRRは、最も高い四分値対最も低い四分値は0.42(95% CI, 020-0.87)であった。年齢調節した分析では、メタボリックシン ドロームの存在のリスクの減少がリコピン、β−カロチン、α−カロチンのより高い摂取量によって観察された。交絡因子を十分に調節した後、リコピンのより高い摂取量によってメタボリックシンドロームの存在の減少傾向が残った(P0.01)。β−カロチンについては第1の四分値と比べて、摂取量のそれぞれの四分値でリスクの減少が観察された[四分値2RR0.44(95%CI0.25-0.77)、四分値3 RR0.54(95%CI0.32-0.90)と四分値4RR0.58(95%CI0.33-1.02)]、しかしβ−カロチンの摂取量とメタボリックシン ドロームの間に用量反応の関係はなかった。α−カロチンの摂取量については、第2と第3の四分値でリスクの減少が見られたが、第4の四分値では見られな かった。β−クリプトキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチンの摂取量はメタボリックシンドロームに関連していな かった(表2)。
メタボリックシンドロームのそれぞれの危険因子. 全カロチノイド、β−カロチン、α−カロチン、リコピンのより高い摂取量は、より低いウェスト周囲、内臓と皮下の脂肪量と関連していた。β−カロチンとリコピンのより高い摂取量はより低いBMIと関連していた。ルテインとゼアキサンチンのより高い摂取量はより低い内臓脂肪量と関連し、リコピンのより高い摂取量はより低い血清トリグリセリド濃度と関連していた(表3)。 我々は他のメタボリックシンドロームの危険因子 との関連を発見しなかった(補足の表1)
論考. 中高年の男性に関するこの調査で、カロチノイド、主 としてリコピンとβ−カロチンのより高い摂取量を取る男性はメタボリックシンドロームの罹患率がより低かった。肥満と血清トリグリセリド濃度の程度はカロ チノイドの摂取量と関連していた。
カロチノイドの摂取量とメタボリックシンドロームの逆相関関係についての我々の発見は、2つの断面調査と一致している(17,18)。アメリカの8800人の成人についての1つの調査は、リコピンを除いた、血清カロチノイド濃度とメタボリックシンドロームとの逆相関関係を発見した(17)。958人の日本人の成人についての別の調査は、β−カロチン、α−カロチン、β−クリプトキサンチンとの逆相関関係を発見した(18)。しかし我々の発見とは対照的に、どちらの調査も血清リコピンとメタボリックシンドロームとの関連を発見しなかったが、リコピンは構成要素のいくつかと関連していた(17,18)。これらの不一致についての可能な説明は、メタボリックシンドロームをもった(0.43µmol/L)参加者とメタボリックシンドロームをもっていない(0.44µmol/L)参加者の間の血清リコピン濃度の僅かな変動であるかも知れない(18)。我々の調査では、参加者間のリコピン摂取量に大きな差異があった。しかし食事リコピンと血清リコピンとの関連の比較が難しいのは、食事リコピンの生物学的利用能が調理の温度のような要因によって影響されうるのが主な理由である(1)。更に、食事カロチノイドの差異は、脂肪組織におけ るカロチノイドの摂取のために血清カロチノイドに直接に反映されないかも知れない。
2型糖尿病について、食事カロチノイドと血清カロチノイドを調べた調査は、いくつかのカロチノイドについては関連がないという結果から逆相関関係があるという結果に至るまで一致しない結果を示している(6-8,10-12,14)。これらの不一致は、いくつかのカロチノイドにおける不十分な変動或は端点における差異(糖尿病対メタボリックシンドローム)のためであり得るだろうが、性や喫煙状態によるよう な修飾効果も又関与している可能性がある。
カロチノイドの抗酸化特性は、慢性疾患とカロチノ イドとの逆相関関係の基礎をなしている主なメカニズムであると示唆されてきた(4)。リコピンはこの調査で測定された6つのカロチノイ ドの中で最も強力な抗酸化物質である(1)。従ってリコピンの摂取量がメタボリックシンドロームと関連しているという発見は、カロチノイドの抗酸化作用がメタボリックシンドロームから守るためにも又役割を果たしているのかも知れないことを示唆して いる。
インスリン抵抗性と腹部の肥満は、ブドウ糖と脂肪代謝やいろいろなサイトカインの刺激に影響を及ぼすことによって、他のメタボリックシンド ロームの危険因子に先行すると一般的に認められている(28)。酸化ストレスがインスリン抵抗性を引き起こすのに関与しているのかも知れない(3)。核性因子kBやp38分裂誘発因子活性化プロテインキナーゼ経路のような、ストレスに過敏な経路がインスリン抵抗性を引き起こすのに関与しているのかも知れない(29)。しかし我々の調査には、カロチノイドの摂取量とインスリン抵抗性の間の関連を示す証拠は殆どない。我々はカロチノイドの摂取量とウェスト周囲や他の肥満の程度との間の関連を実際に発見し、これが主として メタボリックシンドロームとの関連を推し進めることを示唆している。そして内臓脂肪はインスリン抵抗性、脂質異常性、高血圧(30)の発現の一因である可能性がより高いが、我々は内臓脂肪と皮下脂肪の両方との関連を発見した。最近、ビタミンC(31)とビタミンA(3)による抗酸化物質の補足は肥満のラットの体脂肪を減少させ、脂質代謝や熱産生に関係する遺伝子の発現に影響することが発見された。もしかしたら遺伝子発現による基礎的なメカニズムがカロチノイドに対しても役割を果たしているのだろう。 我々の調査が断面的調査であるために、腹部の肥満とカロチノイド摂取量の間の偶然の関係は起こりえない。しかし腹部の肥満は、細胞内と細胞外の抗酸化プールが枯渇してしまう全身性ストレス状態(33)と関連している。従ってそのような逆因果関係は食事カロチノイドよりも血清に対して存在する可能性が大きい。カロチノイドの摂取量と腹部の肥満との関連は、リコピンの摂取量と血清トリグリセリド濃度の間に我々が発見した関連の基礎になっているかもしれない。腹部の脂肪は、脂肪細胞からのFFA(遊離脂肪酸)の放出の増加の一因になり、その結果肝脂肪症や脂質障害の一因になるのかも知れない(28)。更に酸化ストレスの発症の一つである、炎症の結果としての炎症性サイトカインの調節異常は、肝臓、筋肉、脂肪細胞の脂肪酸代謝に影響するかも知れない(34)。
この調査のいくつかの限界に取り組む必要がある。 第一に、我々の調査の断面的調査は、偶然や一時性に関する結論を制限する。いくつかのメタボリックシンドロームの危険因子を持った参加者はより健康的な生き方に変わったかも知れない。しかしそのような変化は我々の関連を弱めただけであろう。第二に、カロチノイドの摂取量は多量養素、ビタミンC、ビタミンE、レチノール(19,20)とカロチノイドの摂取量にたいして認められているFFQを使って概算された。カロチノイドに対する相関関数は0.22から0.44まで変わり、その前の2つの調査(35、36)と一致した。カロチノイドを含んでいる食物の摂取量 を報告する際のランダム変動が中度の相関係数の基礎になっていると思われる。 そのようなランダム変動はゼロの方向へのバイアスを起こして、我々の相関を弱めたに過ぎないだろう。第三に、カロチノイドのより高い摂取量は健康的な生き方のマーカーとして役立つということを、我々は除外することが出来ない。我々は分析において他の生き方の要因に対して訂正したが、未知の交絡因子による混乱がまだ存在するかもしれない。更に、我々の結果はいくぶん偶然によるかも知 れない——特に、α−カロチンやβ−カロチンの摂取量とメタボリックシンドロームの間の関連に対して明白な線状の傾向が観察されなかったので——というこ とを除外することは出来ない。
結論すると、全カロチノイドのより高い摂取量はメ タボリックシンドロームのリスクを減少させ、それはリコピンとβ−カロチンに対して最も強い関連があるかも知れない。肥満と血清トリグリセリド濃度の程度 は、カロチノイドの摂取量と関連する主要な危険因子であるかも知れない。
