リサーチ

天然カロテノイドによるがん予防

西野輔翼(京都府立医科大学 兼 立命館大学)

食品中には多彩なカロテノイドが含有されており、それぞれの特徴が明らかになってきている。我々は、がん予防に応用するための研究を中心に研究を進めており、本講演ではその進捗状況について紹介する。

カロテノイドに関する研究は長らくβ−カロテンに重点を置いて進められてきたが、がん予防に関してはその他のカロテノイドの方がβ−カロテンよりも高い効力を示す場合があることが明らかとなったことをきっかけに、研究が拡大された。たとえば肝がん予防において、α−カロテンがβ−カロテンよりも高い効果を示すことが動物実験によって証明されたのに続いて、天然カロテノイド混合物がさらに優れた効力を持っていることも明らかとなった。また、カロテノイド混合物中に少量含有されているリコピンが、強力な肝発がん抑制効果を示すことを見出した。

以上の基礎的研究結果に基づいて、リコピンを主体として配合したカロテノイド混合物のソフトカプセルを用いてヒトにおける肝がん予防臨床試験を実施した。対象は、肝がんのハイリスクグループとして知られるC型肝炎ウイルス性肝硬変患者とした。その結果、カロテノイド混合物投与群において有意な肝がん発生率低下が確認された。

その後、アスタキサンチン、フコキサンチン、β−クリプトキサンチンも肝がん予防に有効であることを証明するとともに、作用機序の上でそれぞれに特徴があることを明らかにした。したがって、これらのカロテノイドを組み合わせて併用することによって、肝がん予防効果を改善できる可能性がある。実際に、β−クリプトキサンチンに関して、次のように期待できる結果が得られはじめている。
β−クリプトキサンチンはカンキツ類に含有されており、特にウンシュウミカンには他のカンキツ類と比べて数倍高濃度に含まれている。さらに、ウンシュウミカンジュースに関してβ−クリプトキサンチンの濃度を強化する方法が確立されており、肝がん予防に応用するのには好適である。しかも、ウンシュウミカンジュース中にはβ−クリプトキサンチンとともに、肝がん予防効果を持つことが確認されているイノシトールも含有されている。そこで、β−クリプトキサンチンおよびイノシトールを強化した肝がん予防用ウンシュウミカンジュースを調整した。この機能性ジュースをカロテノイド混合物ソフトカプセルと併用してC型肝炎ウイルス性肝硬変患者に投与した。その結果、投与開始後1.5年にわたって肝がんの発生は見られていない。

本研究は現在継続中である。

以上、天然カロテノイドに関する研究結果の一部を紹介した。カロテノイドを組み合わせて効力を高める方法は、種々の臓器におけるがん予防に有効と予測され、今後臨床介入試験で確認することが課題である。