リサーチ

トマトペーストの消費が、良性の前立腺過形成の患者における
プラズマの前立腺特異抗原レベルに及ぼす影響
  
要約
トマトやトマト製品の消費は、前立腺癌の危険度の減少と関連している。我々は、トマトペーストを毎日摂取した良性の前立腺過形成の患者における前立腺特異抗原レベル(PSA)の10.77%の減少を観察した。これは、年齢45-75歳、全員前立腺過形成と組織学的診断をされ、プラズマのPSAレベルが4-10ng/mLの43人の男性のサンプルを使って行われた対照研究というよりむしろ実験研究であった。すべての患者は、50gのトマトペーストを1日1回、連続10週間摂取し、PSAレベルはトマトペーストの消費前、消費期間中、消費後に分析された。反復測定のために分散分析を用いて、トマトペーストの消費前、消費期間中、消費後のPSAレベルを比較した。平均値±SD PSAレベルは、基準値が6.51±1.48ng/mL 、10週間後は5.81±1.58 ng/mL (P=0.005)であった。患者の受け入れは88.3%が良い、9.3%が普通、2.3%が悪かった。1日50gのトマトペーストを10週間食餌で摂取すると、良性の前立腺過形成の患者における平均のプラズマPSAレベルを有意に減少させた、これは恐らくトマトペーストに含まれる多量のリコピンの結果であろう。これは前立腺癌の予防研究ではなかったが、前立腺の生物学におけるトマトペーストのいくらかの作用を示した。前立腺癌の発現には典型的にプラズマPSAレベルの上昇を伴う、従ってプラズマPSAレベルに影響するいかなる介入も病気の進行における影響を示唆している可能性がある。



前立腺特異抗原レベル(PSA)の濃度は、前立腺癌の進行の腫瘍マーカーとして使われてきた、そして高い値はもしかすると病気の始めを示唆するのだろう(1)。 PSAはすでに正常な前立腺細胞によって産生されているので、実際はPSAは前立腺癌の純粋なマーカーではない。しかしPSAが4ng/mLより高いレベルで存在すると、前立腺の生体組織検査の指標として使われ好結果を収めてきた。ごく最近ではそれより低い値でさえ、病気の可能性を示すと提唱されている。この検査の低い特異性は、泌尿器科専門医に、この世界的に使われている検査の性能を改善する手段として、前立腺癌或はPSAフラクションの他のもっと特有なマーカー、濃度、PSA増加の速度や遊離したPSAのような他の指標を探し求めるように促してきた(2)。我々は又、良性の前立腺過形成(BPH)は、その後にBPHの体積と関係があるプラズマPSAレベルの上昇が起こることを知っている(3)。
多くの研究は、トマトとトマト製品の消費を前立腺癌の危険度の減少と関連づけている(4)。トマトの中の主要なカロチノイドであるリコピンが前立腺に直接の影響を持っているという仮説である(5,6)。トマトには前立腺発癌に影響するかもしれないリコピン以外の他の成分を含んでいるかも知れないという証拠もある(7)。
生のトマトのリコピン量は、その種類、成熟度、それが育った環境による(8)。 それでも工業化されたトマト製品或は調理されたトマトは生物学的に利用できる最大量のリコピンを含むことが証明されている(9)。熱処理は細胞壁を壊し、葉緑体からのリコピンの抽出を可能にする(10)。
リコピンについて提案されている多くのメカニズムは前立腺癌の予防に役割を果たしている、即ち抗酸化作用(それは一重項酸素を最もよく除去することが出来るカロチノイドである)、細胞周期の進行の阻害、アポトーシス指数の増加、ギャップジャンクションの伝達の増加、インシュリン様成長因子1の情報伝達の阻害、インターロイキン−6の発現の阻害、II相酵素の誘発、そしてアンドロゲン活性化とシグナルの阻害である(5)。男性ホルモンが前立腺癌の発生に有意に影響するという事実を考えると、多分後者が最も重要である(11)。
現在の研究の目的は、BPHと組織学的診断をされ、リコピンに富んだトマトペーストを含んでいる食餌を毎日摂取した患者のPSAレベルを測定することであった。
この非対照調査で、年齢が45-70歳、BPHと診断され(せいぜい一年前に行われた前立腺生体組織検査による組織学的判定規準)そしてプラズマPSAレベルが4−10ng/mLの43人の男性が監視された。ホルモン、フィナステリド或はリコピンのサプリメントを摂取した患者はいなかった。
すべての患者は、50gのトマトペースト(スープスプーン3杯)を1日1回連続10週間消費するよう指示された。ペーストは温かい食物か冷たい食物と混ぜてもよいが、煮てはならなかった。トマトペーストは又、トマトジュース(トマトペーストをグラス1杯の水と混ぜる)として飲んでもよいし、或は患者の好みに従って純粋でもよい。この毎日の量の配分も任意に選択できた;患者は食べるトマトペーストの量を選んでいつ食べてもよかった――1日に1回でも2回でもあるいは3回でも。食餌のオリエンテーションは与えられなかった;すべての患者は自分の通常の食餌を守り、ただそれにトマトペーストを加えればよかった。
使われたトマトペーストのブランドはOderich S/A(Sao Sebastiao do Cai, RS, ブラジル)であった。この製品は、熟した安全なトマトの果肉に1−3%の塩化ナトリウムを加えて適切な技術的製法で濃縮した結果得られたものである。この製品は独特なトマトの味とにおいをもった、柔らかくて赤い固まりである。
この研究で使われたトマトペーストの量は、1日当たり約13mgのリコピンの投与量を供給した。リコピンの量は、Fishらによって述べられている方法によって計算された(12)。表1に述べられているように、リコピンの量を計算することに加えて、50mgのトマトペーストの栄養価も又分析した。
PSAの検査は、消費の始まる30日前と消費後4週と10週に行われた。すべての検査はRoche® (Roche Diagnostics GmbH, D-68298 Manheim, ドイツ)のElecsys®全PSA免疫測定法とElecsys®2010分析器によって行われた。サンプルは2003年4月から2004年5月まで分析された。イントラアッセイの再現性はRoche®によるElecsys®試薬で決定された、そこでは2.9%の変動係数がPSA値の平均に対して4.76-17.2ng/mL得られた。定量内変動はHospital de Clinicas de Porto Alegre (Porto Alegre, RS, ブラジル)の実験室によって決定され、5.74 %の平均値係数の変動を得た。
年齢は平均±SDとして報告され、年齢の範囲、受け入れの変数(良い、普通、或は悪い)と摂取の仕方(純粋、食物と混ぜる、或は混合)は単純な絶対頻度と百分率として報告されている。
データはトマトペーストの消費の前、間、後のプラズマPSAレベルを比較するために、繰り返される測定に有意水準は0.05にしてANOVAによって統計的に分析された。有意水準0.05のANOVAが摂取の仕方とプラズマPSAレベルを比較するために使われた。PSA値は平均値、中央値、SDとして報告されている。
平均年齢は63.7歳で、年齢範囲は圧倒的に60-70歳(19人の患者即ち44.2%)であった。
研究の終りに製品の受け入れについて尋ねられると、38人(88.3%)の患者は良いと考え、4人(9.3%)は普通と考え、たった1人(2.3%)が悪いと考えた。
摂取の仕方について25人(58.1%)の患者は他の食物と一緒にトマトペーストを摂取し、13人(30.2%)は純粋か水と摂取し、5人(11.6%)は両方の方法(混ぜる仕方)で摂取した。ジュースにして食事中に水と一緒にトマトペーストを消費するのは食物と混ぜた摂取と考えられた。製品を他の食物とは別に摂取した時のみその摂取は純粋と考えられた。
他の食物と混ぜたトマトペーストは、他の摂取の仕方と比較してPSAレベルを減少させた、しかしその差は有意でなく(P=0.148)、それは恐らくサンプルが少なかったためであろう。恐らくこの減少が起こったのは、リコピンがオイルと一緒に摂取された時リコピンの吸収がよりよくなるためであろう(13)。
このサプルでは、平均のプラズマPSAレベルは87.11%の検出力で、6.51±1.48から5.81±1.58ng/mL(P=0.005)まで減少した。基底のプラズマPSAレベルは、4週間目後に決定されたレベルと有意に違わなかったが(P=0.876)、4週目から10週目までは有意に異なった(P=0.002)。検査の全結果とPSA値は表2に示されている。
いくつかの軽い副作用が見られた、即ち皮膚のかゆみ(4.6%)、胸やけ(7%)、そして鼓腸(2.3%)である。
BPHという組織学的診断をもった男性によって消費されるリコピン或はトマトとトマト製品に関する科学文献の中に実験研究は1つも見つからなかった。従って、現在の研究の中で論じられるすべてのヒトの研究は、前立腺癌の患者に関することである。
1つの研究は、前立腺癌患者で、前立腺摘除の前に3週間いろいろな料理に加えられたトマトペーストによって30mgのリコペンを摂取した32名の男性を観察した。リコピンの濃度はプラズマと前立腺の中で増加した(それぞれ1.97と2.92倍;P<0.001)、そしてPSAレベルは17.5%まで減少した(P<0.002)(6)。我々の研究は、研究の被験者は前立腺癌の診断を持っていなかったけれども、PSAレベルが10.77%まで減少したことを示した。
2003年に発表されたマウスで行った実験研究は、トマトとリコピンのサプリメントに基づいている食餌に関する面白いデータを提供している。マウスは3種類の食餌養生法を与えられた:食事制限、リコピンのサプリメントとトマトの粉末。トマトの粉末を含んでいるけれどもリコピンのサプリメントを含んでいない食餌は、前立腺癌を阻害することが観察されたが、これは、トマトはリコピンに加えて前立腺発癌を調節するかも知れない物質を含んでいることを示唆している(14)。
トマトペーストは次の理由で現在の研究のために選ばれた:a)一次食品の吸収は食物のサプリメントよりも効果的であることを考慮して1つの食物を使用(15);b)トマトペーストはリコピンに富んでいる(9,16)、そしてc)恐らくトマトはリコピン以外に血液のPSAレベルに影響することが出来る他の特性を持っている(7、14)。
前立腺癌の発生には典型的にプラズマPSA レベルの上昇を伴う(17)。たぶん、プラズマPSAレベルに影響する介入は、この病気の自然な生長に影響を持つことが出来ると仮定するのは妥当であろう(18)。PSAコード化遺伝子は良く知られているアンドロゲン標的遺伝子の1つである。(19)。従って、血清PSAレベルの減少は、ヒトの前立腺における、前立腺癌を予防する潜在力をもったリコピンの抗アンドロゲン効果を意味するかもしれない(5)。
トマトペーストがプラズマのPSAレベルを減少させ、従って前立腺癌を防ぐことが出来るという強い証拠を得るためには、数年間大きい、臨床の、無作為の、多中心の二重盲検試験を行うのが理想的であろう。しかしこれを成し遂げる難しさは明らかである:トマトペーストの摂取の二重盲検は難しい。これをする1つの方法は、SELECT研究におけるように、セレンやビタミンEのようなトマトの成分を含んでいるカプセルを使って研究を行うことであろう(20)。