
リサーチ
リコピンの可能性
「地中海沿岸の食餌における必須成分としてのトマトの地位は、この食餌の有益な効果の科学的根拠を発見しようといっしょうけんめいな栄養学者や臨床医学者から大いに注目を引く結果になった。」
-Tom Coultate
リコピンはトマトにその鮮赤色を与えるカロチノイドの色素である。厳密に化学的な点から言えば、それはその分子のそれぞれの端に環状構造が欠如していることによって他のカロチノイドとは容易に区別される炭化水素テトラテルペノイドである(図1参照)。
リコピンはピンクグレープフルーツやスイカの赤い色素であると確認されているから、一般的に思われているようにトマト特有のものではない。リコピンの近い親類であるβ−カロチンと違って、リコピンはビタミンの地位を主張することは出来ないが、最近少なくとも1つの食物成分と同じ位価値があるという名声を得た。
いわゆる‘地中海沿岸の食餌’の必須成分としてのトマトの地位は、この食餌の有益な効果の科学的根拠を発見しようといっしょうけんめいな科学者、特に栄養学者や臨床医学者から大いに注目を引く結果になった。
最近の会議(この会議の議事録がこの記事の根拠になっている)は、科学者がリコピンの疑いのない利益を利用しようといっしょうけんめいな食品産業の代表者と情報をやりとりするまれな、大いに効を奏した機会を提供した。その紹介で議長(原文のまま)、Margaret Ashwell博士は、実際に栄養学者を“市場取引のサルの背中のシラミの卵”と呼んだ。科学者が統計の不確実さを強調しないで何かを言うことを当然嫌がることが、市場取引部門の熱意とうまく行かないのは度々あることである。このような会議の必要を引き起こしているのは、健康に有益であるとする主張が、科学的に統計的に根拠のある証拠によって支持されるよう当局(特にアメリカと欧州連合の)の圧力が、実際に高まっているからである。
抗酸化物質の定義
関係するすべての人が、すべてのカロチノイドが必ずしもカロチンであるとは限らないという事、これらの物質の名前にしばしば現れるギリシャ語の文字は単に装飾のためではないという事を理解することが重要である。Keele大学物理化学部の教授George Truscott教授は、我々のためにこのことを述べて、遊離基や抗酸化物質のような物について非常に必要な、そしてかなり容易な説明を与えてくれた。
この基礎的で、かなり進歩した化学は食餌のリコピンの有益な健康効果をよく理解するために不可欠である。リコピンから利益を得る病気のリストには、今では心臓病、いくつかの癌、高齢者の主要な型の盲目が含まれているので、食餌におけるリコピンの地位とリコピンについての我々の理解を過小評価してはいけない。
前立腺癌の闘士
リコピンの補足は、前立腺癌患者に実際の利益を提供すると広く信じられている。前立腺癌は英国の男性に最も普通に起こる癌であるけれども、実際には癌による死亡者の数では3位である。その重要性にもかかわらず、これは潜在的犠牲者としてのその役割をもっている男性がそれについて全く話さない病気である。Neil Barber氏(ロンドンのKings College病院で泌尿器科学専門の立会医の外科医)の会議へのこの貢献は特に貴重である。
実験室の動物或いは培養された細胞を使った臨床研究からのデータは、リコピン補足の利益をしっかりと立証しているけれども、臨床試験の不足と疫学的証拠の薄弱さ(全くないということではない)が問題である。Barber氏は、トマトリコピン(そして彼はトマトリコピンの複合体はリコピンのみと全く異なっていることを強調している)は、病気の開始を防ぐ物質というより既存の病気の進行を順調に修飾する物質だと考えられるべきであることを明らかにした。
リコピンの補足の最も貴重な特徴の1つは、リコピンは患者自身の治療において、積極的で明確な役割を勤める機会を患者に与えることが出来るということである。FDA(食品医薬品局)は、近い将来、前立腺癌に関してトマトリコピンが健康に有益であるとする主張に対して肯定的な応答を発表するものと期待されている。この事は歓迎されるけれども、それは市場取引の部門の仕事を少しも容易にすることはないだろう。前立腺癌に関する必要な言及は、消費者に‘ある年齢の’男性だけがリコピンに富んだ製品を消費すべきであるという印象を与えるだろう。ラベルの説明文の筆者が、どのようにこれは決して女性の消費者に不適当ではないと説明し続けるかは、将来にならないとわからない。彼等の側には、‘過度’のリコピン消費にはよく知られている副作用がないという広まった容認がある。第2に、会議で他の講演者が我々に明らかにしたようにもっと多くのトマトリコピンを消費することから更なる潜在的な有益な健康効果がたくさん得られる。
心臓病の役割
心臓病の発生率或いは重症度の減少は、通常地中海沿岸の食餌と関連がある1つのそのような利益である。イスラエル工科大学のMichaelAviram教授は、トマトのリコピン含有が、赤ワインやオリーブ油と共に、この食餌の有益な健康効果に貢献するらしいという事を示した。(これは、会社とこの食餌が普通食べられている場所の利益に関する彼の純粋に個人的な見解に付け加えられた)。 彼のデータは、市販用のトマト抽出物でのかなり妥当な濃度のリコピンは、動脈疾患の1つの特徴と認められる低比重リポタンパクコレステロールの酸化を有意に減少することが出来ることを証明した。
DNAの損傷
脂質は酸化損傷を受けやすい唯一の生体分子ではない。DNAは特に傷つきやすい、それでリコピンのような抗酸化物質が抗癌作用を持っているだろうという考えはあり得る。
DNA損傷の頻発の減少或いはDNA修復メカニズムの改善された効率のような効果を証明することが出来るだろう。腸、膵臓、乳房、頚、口腔、食道の癌に及ぼす好ましい効果の徴候とともに、肺と胃の癌に対するリコピンの保護的効果に関する説得力のある研究が出はじめている。
そのような効果の調査における第一段階は、トマトペーストを補足した食餌が組織において意図した効果を持っていることを証明することである。ミラノ大学のMarisa Porrini教授は、血漿のリコピンレベルが食餌の補足で有意に上昇し、それとともにリンパ球のDNAに発見される損傷レベルが減少すること、を確認した。
ペーストの効率
Porrini教授によって確認された食餌の行動の1つのよく知られた面は、生のトマトからのリコピンと比べてトマトペーストやソースのようなトマト製品から摂取したリコピンははるかに効率がよいことである。これは一つには、トマトが熱加工されている時色素タンパク複合体の破壊のため、また一つには、トマトベースの料理の中にある油や脂肪が消化の間にリコピンの溶媒或いは担体として作用するためだと推測されている。フィトエンとフィトフルエンの貴重な補助的な役割に関する彼女の観察記録はそれほど期待されていなかった。これらのずっと色の淡い色素は叉、有意な量でトマト製品の中で見られる。このことはすべて、トマト製品は、生のホールトマト或いはリコピンだけを含んでいる錠剤よりもずっと効果的な生物学的に利用できる抗酸化物質の供給源であるという考えを示している。
皮膚の保護
イスラエルのベングリオン大学のJoseph Levy博士は、日光のUV部分が及ぼす有害な影響から皮膚を守るカロチノイドの可能性に関する彼の研究について述べた。Porrini博士同様、彼はホールトマトを含有している製品の中にあるフィトエンとフィトフルエンを含む抗酸化物質の複合体は、精製されたリコピンだけよりもずっと効果的――この場合UVによって誘発される紅斑(日焼け)を防ぐのに――であることを発見した。彼は、これら3つのカロチノイドの酸化誘導体が潜在的発癌物質の解毒に積極的な役割をする酵素の誘発に実際に参加するのかもしれないという可能性を提起した。ぎりぎりの時になって太陽の下での休日を予約する人々にとって不運なことには、皮膚のカロチノイドレベルが役に立つ程度まで増加するには10週間にもわたる高いカロチノイドの摂取が必要である。
製品の可能性
前の講演者達が会議でトマトリコピンをめぐる科学的な健康効果についての十分な理解を与えてくれた後、市場情報を専門にしている自営のコンサルタントであるMoira Hillianが世界中のリコピンを含んでいる広範囲の食品を我々に紹介してくれた。
消費者はリコピンについて、それが何であるか、それはどこから来るのか、そして少なくともその潜在的な健康効果のいくつかについて非常によく知っているように見えるが、製品にリコピンを含んでいるというだけでは、それが売れることを保証しない。一つの大きな理由は、リコピンが非常に強い色をした赤い色素であるという避けられない事実である。このことは、役に立つ量を含んでいる製品はいずれも鮮赤色であることを意味する。ケチャップ、トマトジュース、パスタソース等のような沢山のトマトを含んでいると一般的に認められている製品に健康効果があると主張している製造業者にとっては、このことは問題ではない。しかしながら、他の製品にとってはそれは問題であるかも知れない。Hilliamさんは、機能性食品が失敗すると、健康へのメッセージを理解せなかった等のせいにしなくて、市場取引のせいにしたがることが多いことを聴衆に思い出させた。実際は、新製品が失敗する理由の数は製品の数だけある。健康に有益であるとする主張は、価格、味、風味、感触を受け入れられない事、或いは目標のマーケットの誤認などの問題を克服しないだろう。
実証
リコピンを主成分とする製品の市場取引のもう1つの大きな問題は、健康は統計的にしっかりした科学的証拠によって実証されなければならないという取り締まり当局の要求である。‘健康’とか‘幸福’に基づいた主張はもはや受け入れられないだろう。近い将来‘有用かもしれない’と重ねていくら言っても誰をも納得させないだろう。
恐らく、栄養学者や臨床医学者がいくつかの健康効果に関して、1日の所要摂取量或いは許容量を与えてくれる事が出来るだろう。これの明らかな効果は「このデザートの10人分はRDA(栄養所要量)の4分の1までも供給するであろう(そしてあなたの糖尿病の危険度をひどく高める)」というせりふでメッセージを伝える必要がある製品を市場から除くことであろう。
自然の色
その色にかかわらずリコピンでどんな製品が服用されることが出来るか調べるかわりに、取るべき道は食品の中に使われている他の赤色/ダイダイ色の食物の色をリコピンにとって代ることであろう。この可能性はOverseal Natural IngredientsのMichael Fallonによって調査された。現在、ほぼ425トンの自然色が毎年ヨーロッパで売られている、そのうちの半分以上がβ−カロチンである(リコピンはほとんどゼロである)。カロチノイドは工業技術的見地から貴重である。カロチノイドが脂溶性であることは、アントシアンを苦しめるpHの変化に影響されなくし、そしてカロチノイドは高い温度にかなり抵抗力がある。
アントシアンと比べて、リコピンは光線安定性が優れている。カロチノイドの酸化に対する易傷性は、組成に自然或いは合成の抗酸化物質を加える事によって軽減する事ができる。現在リコピンはもう1つの自然色素であるカルミンの代用品として本気で考慮されている。コチニール(洋紅)としてよりよく知られているアリマキのような昆虫からの抽出物は、規定通りでないという欠点をもっている、そしてそれは叉菜食主義者には受け入れられない。
消費者の知識
リコピンとは何か、リコピンは何が出来るか、どのようにしてそれをするかを理解するには、すべての質問は科学者によって回答されるべき問題である。
しかしながら、この知識はもし適切な程度まで消費者によって理解されないなら、全く学問的なままにとどまっているだろう。この問題は、最後の講演者であるAilbhe Fallon(前の講演者は関係がない)によって詳しく調べられた。
彼女の研究によると、消費者は何が健康的食物の構成要素であるかについてずっと高度の理解を発達させている。自分のライフスタイルを変えたり、より健康的な食餌を採り入れる動機は男性と女性では全く異なっている。男性が一般的により健康的な食餌を採り入れたり、ビタミンやミネラルのサプリメントを摂取するのは、ある特定の健康上の問題が始まったり或いは‘老齢’の影響に氣づいた時その解決策としてである。対照的に、女性はもっと先制攻撃の方法を採り入れて、自分自身とその家族が将来良い健康を確保するためにサプリメントや強化食品或いは機能性食品を消費する。
問題点を話す
Fallonさんは、会議を通じて述べられたトマトから得られる多くの利益の事を、一般大衆は非常によく理解していることを示した。地中海沿岸の食餌、特にそのトマトの含有は健康的であることが分かっていて、抗酸化物質、遊離基、そして癌の予防さえとの関連性が認められ、そして信じられている。もっと明確に言えば、リコピンの供給源としてのトマトの価値とリコピンの消費から生じる健康効果は、現在はたとえ限られた範囲にしても、認められている。リコピン強化食品の発達にとって重要なことは、消費者の頭の中の買い物リストでそれらをコレステロールを下げる植物ステロール(たとえばBenecol)やプロバイオティクス(たとえばヤクルト)と同じ順位に置くことであろう。これには基本的な相関関係を強調し続けることが求められる:
地中海沿岸の食餌<>トマト<>抗酸化物質<>リコピン<>遊離基<>癌
最初の研究は、消費者がすでにこの関連を持たせていることを明らかにした。もっと重要なことは、残り物のトマトを食べても、科学者によって言われてきた種類の利益を与えないだろうという意識を植えつける必要であろう。
英国の大半の人々は定期的にトマトを食べているが、最も熱烈なトマトのファンでさえ利益を与えるであろう量の5−7mgのトマトリコピンを得るために十分なトマトを消費していそうもない。ここにトマトリコピンに富んだ製品(トマト製品でさえ)がその役割を見出すであろう。
今迄は男性の前立腺がリコピンの第一のターゲットだと思われてきたかも知れないが、女性もそして若者でさえもリコピンに富んだ製品を消費する妥当な理由が明らかにたくさんある。
