リサーチ

「トマトベースのドリンクが炎症、免疫調節、酸化ストレスのマーカーに及ぼす効果」
Claudio Gardana, Paolo Simonetti, and Marisa Porrini

食品科学・微生物学部、ヒトの栄養部門と薬理科学学部
ミラノ大学、ミラノ20133、イタリー

トマトとトマト製品の規則的な消費は、数種類の癌の低い危険率とそれより低い程度の冠性心疾患の危険率と一貫して関連している。健康によい特性と思われている多くのトマト成分の中で、カロチノイドと特にリコペンが積極的に研究されている。粥腫発生における免疫/炎症の過程において認められている役割を考慮して、免疫と炎症のマーカーの調節(酵素の免疫測定法による)、基底リンパ球DNA損傷(コメット分析による)とF2-イソプロステインの排泄(LC-MS/MSによる)に及ぼすトマトベースのドリンク(ライコマート)―以前に酸化ストレスからDNAを保護することが示された―の効果が、26人の健康な若い被験者について研究された。プラセボー対照、二重盲検、交差研究で、ライコマート(5.7mgのリコペン、3.7mgのフィトエン、2.7mgのフィトフルエン、1mgのβ―カロチンと1.8mgのα―トコフェロール)或いはプラセボドリンク(同じ味と風味であるが活性化合物が全くない)が26日間与えられ、ウォッシュアウト過程によって分離された。調査期間中、被験者はいつもの食餌、従って制限のない食餌を続けた。TNF-α(腫瘍壊死因子α)の産生はドリンクの消費26日後34.4%低かったが、他のパラメーターは処理によって有意に修飾されなかった。そして今度は、少量のカロチノイドを供給するトマトドリンクの規則的な摂取がTNF-αのような炎症の媒介物質の産生に及ぼす僅かな効果が若い健康な被験者に見られた。カロチノイドの低い状態と/或いは免疫系が免疫不全の被験者についての今後の介入試験は、カロチノイドがヒトの免疫パラメーターを調節するかどうかの問題を解決するだろう。

序文
トマトとトマト製品の規則的な消費は、数種類の癌の低い危険率とそれより低い程度の冠性心疾患の危険率と一貫して関連している。多くのトマト成分の中で、例えば健康によい特性と思われているビタミンCとポリフェノール、カロチノイドと特にリコペンが積極的に研究されている。カロチノイドは強い抗酸化物質で、それは又、恐らく細胞の酸化還元の環境と細胞と細胞の相互作用を調節することが出来るために免疫機能に影響を及ぼすということが示唆された。
カロチノイド(リコペンを含む)の消費が心血管疾患や粥状硬化症に及ぼす予防効果の証拠は、今までのところ状況によるが急速に増大している。一例として、我々は、3週間にわたるトマト製品の規則的な摂取は、心血管疾患と関連している過酸化脂質のマーカーを減少させるという事を示した。粥腫発生における免疫/炎症過程のますます認められている役割は、免疫調節と抗炎症の可能性のある化合物の摂取は、主としてサイトカインの産生を低下させることによって、動脈壁の損傷を阻害するかもしれないと示唆する。この仮説と一致して、脈管内膜/中膜の厚さによって評価されたように、リコペンのより高い摂取は粥状硬化症の重症と逆相関関係であることが発見された。更に、核性因子kB(NFkB)媒介による細胞粘着分子の発現と前進炎症サイトカインが動脈壁の肥厚に関与していることが知られている。 面白いことに、リコペンは、例えば樹状細胞で示されているように、NFkBの活性を阻害する。
地中海の食餌に豊富な他の抗酸化物質、即ちレスベラトロール、オレウロペイン、ヒドロキシチロソールは内皮のNFkB媒介による活性を阻害することが示された。同じ炎症/ NFkB媒介による経路が変異生成と発癌に関与している。従ってアリコペンとカロチノイドが炎症媒介物質、例えばTNF-αの産生を減らすことによって変性疾患を防ぐ可能性が存在する。
最近、我々は、リコペン、フィトエン、フィトフルエン、α―トコフェロール 含油樹脂と一緒に調整されたトマトドリンク(ライコマート)の毎日の摂取は、血漿とリンパ球のカロチノイド濃度を増加し、細胞の抗酸化保護を増大させることを報告した(13)。今我々は、免疫と炎症のマーカーの調節、基底リンパ球DNA損傷、生体内での過酸化脂質のマーカーであるF2-イソプロステイン排泄に及ぼす同じドリンクの効果を更に研究した。

結果
刺激された血液細胞によるIFN-γの産生はプラセボ摂取[9.3(6.2)―21.3(15.7)ng/mL]26日後有意に増加した。逆に、ライコマート消費の期間後有意な調節は注目されなかった。
TNF-αに関して、その産生はプラセボの投与によって修飾されなかったが、ライコマートの消費の結果、攻撃誘発された全血液で定量された有意に(34.4%)低い濃度が生じた。
内因性のリンパ球DNA損傷は低く、ライコマートの摂取後減少の傾向が観察されたとしても、プラセボ或いはトマトドリンク(プラセボ、2.6±1.3―2.6±1.1; ライコマート, 3.3±1.9−2.8±1.2%; 尾部のDNA、平均値±SD)の摂取後有意に変化しなかった。
最後に、過酸化脂質のマーカーである8-イソ-PGF2α排泄はどちらのソフトドリンク[プラセボ、2.4(0.2)―2.1(0.2); ライコマート, 2.3(0.2)―2.4(0.2) ng/mL; 平均値±SD]によっても修飾されなかった。

論考
カロチノイド(即ち、βーカロチン)の免疫調節活性はいくつかの動物の研究によって実証されているが、サプリメント或いはカロチノイドに富んだ食物を使ったヒトの介入研究のデータはまだ議論の余地がある。カロチノイドが免疫系に作用する潜在力は、それらが細胞膜の中か内側に位置することが出来る親油性の複合物質であるという事実によって少なくとも幾分説明されるだろう―細胞膜では表面分子が一次免疫反応を和らげ、そして変異生成と発癌にも関与している酸化還元に敏感な転写因子の活性を和らげることが出来るのだろう。
我々は以前に、トマトドリンク(ライコマート)の26日間の摂取は血漿ばかりではなくリンパ球のカロチノイド、即ちリコペン(+10.5%)、フィトエン(+159%)、フィトフルエン(+84%)、そしてβ―カロチン(+51%)の濃度を高めることが出来ることを報告した。介入後、リンパ球が生体外の酸化ストレスによって引き起こされるDNA損傷に抵抗する力は有意に増大した。現在の研究で、我々は酸化ストレスにさらされていない細胞で評価された内因性DNA損傷に及ぼすライコマートの効果を少しも発見しなかった。逆に、Pool-Zobel等は、2週間のトマトジュース(330mL/日)の介入に従った被験者において内因性のDNA分子の連鎖の破損レベルの減少を報告した。異なった結果は、我々の研究に加わった被験者が皆若くて健康で、非常に低い(2−3%)基底DNA損傷をもった被験者であったという事実のためであると解釈できるだろう。従って、基底の変動はたぶんごく僅かであるから生物学的に重要でないだろうが、抗酸化物質、例えばカロチノイドは外因性の酸化刺激に対して保護するものと思われる。
この研究で我々は、刺激された血液細胞の中のIFN-γ分泌物を分析することによって評価されたように、免疫機能に及ぼすライコマートの効果を目撃しなかった。実際、我々は、プラセボの投与後IFN-γの産生の増加を記録した。プラセボドリンンクは生物学的効果を働かせることが出来るような生物活性成分を含んでいないので、この事象を解釈することは現在難しい。
IFN-γとは反対にTNF-αの産生の著しい調節が観察された。実際、TNF-αの産生はライコマートの摂取によって有意に(−34%)減少した。TNF-αはマクロファージとT細胞によって産生され、免疫反応において多様な機能をもっているサイトカインである。例えば、それは主に組織の炎症と急性期反応に関与している。更にそれはアポトーシスの発生に関わっている、そして又 TNF-αレベルの持続的な上昇は免疫反応のエフェクター期の間は有害であるかもしれないと示唆されている。
我々のデータはBriviba等のデータと一致しない、彼等はライコマート含油樹脂の補足2週間後にTNF-αの産生における効果を少しも記録しなかったからである。2つの研究の違いは、調査の継続期間(それぞれ26 vs 14日)とライコマートの調剤―Briviba等の研究ではソフトドリンクとしてよりむしろカプセルとして投与された―を含んでいる。他の発表されているデータは我々のデータと異なっている:一例として、十分に栄養を与えられている初老の被験者による8週間のトマトジュースの消費(330mL/日、47.1mg/日のリコペンを供給する)は、活性化した末梢血単核球(PBMC)によってTNF-α濃度が上昇した。TNF-αのような前進炎症サイトカインの産生は、若い被験者より初老の人々の方が高いことが報告されている。しかし、Watlz等も又、対照群(同じ量の鉱泉水を消費する)においてTNF-αの産生が増加する傾向を記録した。最後に、5%のFBS(カロチノイドがない)或いは5%の自己血清(リコペンが高い)を含んでいる培養液で培養されたPBMCは、同じ量のTNF-αを産生し、トマトジュースが初老の人々によるサイトカインの分泌に及ぼす効果が矛盾していることが明らかになった(23)。同じ著者達によるもう一つの重要な観察は、カロチノイドの低い食餌(果物と野菜の摂取を制限することによって得られる)を摂取した被験者はT−リンパ球の機能の低下を示し、この事象はトマトジュースを再び摂取することによって回復するという事であった。しかし観察された調節は血漿のカロチノイド濃度における変化によって説明されなくて、他の化合物が関与していることを示唆している。
サイトカイン産生の調節に加えて、生体活性化合物の抗炎症効果を説明するもう一つの重要な潜在的メカニズムはアラキドン酸代謝の阻害である。特にF2 イソプロステインはアラキドン酸のCOXから独立した遊離基に触媒された酸化の特定の最終生成物であり、生体内の過酸化脂質の敏感で信頼できる尺度である。
F2イソプロステインの尿による排泄はライコマートの消費によって修飾されなかった、しかしこれはトマト製品(生、ソースとピューレ)によって得られた我々の以前の結果と対照的である。制限された食餌―逆に以前の研究で採用された―を与えられなかった健康な被験者にリコペンが投与されたので、この結果はかなり妥当性がある。もう一つの親油性の抗酸化物質、即ちビタミンEが健康な被験者に投与された時、F2イソプロステインの排泄に影響しないことが明らかになった。又、我々は今免疫測定法の代わりに質量分析法によってF2イソプロステインを測定した、こうして他の分子による分析への潜在的介入を排除した。
最後に、我々は少量のカロチノイドを供給するトマトドリンクの規則的な摂取が、若い健康な被験者におけるTNF-αのような炎症の媒介物質の産生に及ぼす僅かな効果を報告する。これらのデータはリコペンや他のカロチノイドが免疫反応に影響するかどうかという論争を高める。更に我々は、これらの健康な被験者においてトマトドリンクが生体内の過酸化脂質或いは内因性DNA損傷に及ぼす有意な効果を少しも発見しなかった。カロチノイドの低い状態/或いは免疫系が免疫不全の被験者について更なる介入試験が続いて行われるだろう。