リサーチ

「加工処理しているトマトから得られる天然トマトオレオレジン抽出物の安全性評価」
R.A.Matulka, A.M.Hood, and J.C.Griffiths

要約
実験に基づく疫学研究によって、多量のリコピンを含有するトマト製品の消費とガン危険率の低下と関連があることが明らかにされている。リコピンの防御効果はその抗酸化の潜在力と関係があるのだろう。リコピンが酸化を阻害することは既に明らかにされている。登録商標をもつ天然トマトオレオジン抽出物(NTOE)は、トマトから作られた6%のリコピンを含有する精製トマトオレオジンである。NTOEは毒性の影響について評価され、急性経口毒性研究から得られた50%の致死量(LD50)は5000mg/kg体重より高いことが発見された。13週間の研究によって得られた無毒性量(NOAEL)は4500mg/kg/日であった。NTOEの急性皮膚毒性研究で、2000mg/kg体重では毒性は見られなかった。NTOEはウサギのモデルでは皮膚炎症を起こさなかったが、中程度の眼の炎症を起こす可能性をもつことが発見された。ペトロラタムの中では5%(w/w)でテストされたNTOEは、モルモットのモデルで中程度の感作を示した。エームス試験によって決定されたように、5000μg/プレートまでは突然変異誘発性の可能性を示す証拠はなかった。これらの結果は、普通のヒトのリコピン消費の300倍より多い投与量で、動物のモデルにおいて経口、皮膚、或いは突然変異誘発性の毒性をNTOEはひき起こすことが出来ないことを実証している。リコピンを含んでいる食品の消費分析は、平均毎日8.2mg/日のリコピンを摂取していると推定した。

序文
食餌とヒトの健康維持の重要性の証拠は十分に裏づけられている。抗酸化物質は、病気に対する体の抵抗力の増大と強い関連がある(Gann et al., 1999; Van Poppel and Goldbohm, 1995; Zeigler, 1991)。カロチノイドが豊富な野菜の消費も叉遺伝子の損傷を減少させることが示された(Pool-Zobel et al., 1997; Porrini et al., 2002)。特に、高レベルのカロチンとリコピンを含んでいるトマトベースの製品は、心血管の健康、がんの危険率の低下、ヒトのDNAに対する酸化損傷の減少と関連づけられてきた(Bowen et al., 2002; Porrini and Riso, 2000; Willcox et al., 2003)。加工処理されたトマトのリコピンの方が、生のトマトのリコピンより生物学的利用能が高いことが示されている(Boham and Bitsch, 1999; Gartner et al., 1997; Porrini et al., 1998)。更に、脂質の濃度は、関係した脂質の型と同様に、血漿に吸収されるリコピンの量を調節するのだろう(Bohm., 2002; Lee et al., 2000)。自然の食物源からのリコピンの毎日の(バックグラウンド)消費量はアメリカの人々でおおよそ5mg/日であると報告されている(Schweitzer et al.,1999)、それは60キログラム(132ポンド)の人に対して0.083mg/kg/日であると計算される。あいにくSchweitzer等(1999)は、彼等の結果を抽象的な形で報告しているので、分析に関する詳しい情報は手に入らない。
消費分析は、リコピンが成分となっている食品からのリコピンの毎日の摂取量を推定するために行われた。Continuing Survey of Food Intakes by Individuals(CSFII)(個人による食物摂取の継続調査)1994−1996データベースからの食物消費データが使用された。リコピンが周知の成分である食品は、Holden等(1999)によって報告されているようにUSDA-NCCカロチノイドデーベースを使用していることが確認された。USDA-NCCカロチノイドデーベースは叉これらの食品中のリコペン濃度も提供している(USDA Nutrient Data Laboratory, 1998)。 合計26品目の食品と食物製品が選ばれているが、それらにはトマトとトマト製品ばかりでなく果物、野菜製品、肉製品が含まれている。食物とリコピン消費は、(1)アメリカ全人口の個人に消費の補外法のためにデータに加重値を与えること、(2)食物消費の推定量(g食物/日)にリコピン濃度(mgリコピン/g食物)を掛けること、によって算定された。リコピンを含んでいる食品を1品目かそれ以上消費する個人についての現在の消費分析は、リコピンの毎日の平均摂取量(そして90番目の百分位数)は8.2(15.7)mg/日であると推定されると示している。
いくつかの臨床研究がリコピンについて行われた。ある研究は、1回の投与量おおよそ7mgのリコピン(トマトピューレの形で)の14日間の消費によって、リンパ球のDNA損傷が減少するという恩恵を示している(Porrini and Riso, 2000)。他の研究は、おおよそ30−75mgリコピン/日の消費レベルでのリコピンの恩恵を示している(Chen 等, 2001; Lee等, 2000; Paetau 等, 1998)。 これらの研究は、30−75mg/日のリコピン投与量は許容範囲であるが、軽症の胃腸の問題のみが報告され、その問題は使用を中止して数日以内に解決された。多量(2リットル/日まで)のトマト製品の消費から起こる副作用の唯一の報告は、カロチノイドによって誘発される皮膚の変色であるリコピン血症になるということである(La Placa, 2000; Reigh, 1960)。現在の臨床前研究の目的は、食物加工処理するトマトから得られるトマトオレオジンの中の6%溶液としてのリコピンの経口、皮膚、遺伝子的影響を決定することである。

論考
最近の文献レビューは、トマトベースの供給源からのリコピンの消費に起因するヒトや動物の急性経口毒性をあばく事が出来なかった。胃管栄養法によるラットへのリコピン(オレオジン混合物中の)投与に関する現在の急性毒物学研究では、いかなる投与量でも体毒性の徴候が観察されず、動物は予期された体重の増加(図1)を示し、死体解剖の時には異常は全然見られなかった。従って, Sprague-DawleyラットにおけるNTOEの急性経口メディアン致死投与量(LD50)は5000/mg体重より高いことが判明したと結論することが出来る。トマト製品のより高い投与量を長期間続けているとリコペン血症と呼ばれる可逆性の皮膚変化を起こす事が分かった。二つの症例研究は、この変化の症状ともっともらしい原因を裏付けした(La Placa, 2000; Reigh, 1960)。両方の症例研究で、それぞれの女性は多量のトマト製品(トマトジュース2リットルまで)を数年間毎日消費した。リコペン血症の症状は、皮膚が‘オレンジ色をおびた黄色’に変色することと、肝臓の局部にリコペンが堆積するために起こる腹痛を含む。肝臓の局部は脂肪嚢胞を作って、実質組織の顕微鏡的、肉眼的変化を引起こすが、危険なほどに有毒な結果の例はあげられていない。同様に、CDラットにNTOEを4500mg/kg/体重までの投与量で経口投与を13週間続けると全体的に十分に耐えられ、死や毒性の証拠は見られなかった。処理に関係した徴候は糞の着色に限られていた。処理された動物の血漿アルカリホスファターゼ活性はコントロールより低い(有意でない)傾向であった。この影響は、コントロール対処理グループに与えられたコーンオイルの量と関連しているのだろう(Young 等, 1982)。供給された実験材料が半固体で投与量が高かったので、処理された動物のために希釈するために使われたコーンオイルの量がコントロールに与えられたのよりかなり少なかった。処理されたグループに見られた低い血漿アルカリホスファターゼ活性は、処理グループに使われたコーンオイルの量がより少なかった結果であったのだろう。処理されたオスのナトリウム濃度が僅かに低いこと、4500mg/kg/日を与えられたオスが処理6週間後アラニンアミノトランスフェラーゼ活性が有意でない程度に高くなったこと、最も高い投与量を与えられたメスが処理12週間後に尿素濃度が高くなったこと、の意味は明らかでないが副作用とは考えらない。
13週間にわたるNTOEでの処理後血流の中にあるリコペンの濃度の最初の決定は、NTOEの吸収は450と4500mg/kg/日の両方で同じであったことを示唆している。従ってNTOEの450mg/kg/日は有害レベルではないが、血液循環におけるリコピンの血漿濃度が最高であるレベルを表しているのだろう。この亜慢性研究の発見に基づいて、毒性の決定的な証拠は全然示されず、NTOEの無毒性量(NOAEL)は4500mg/kg/日(270mgリコピン/kg/日)である。この量は、おおよそ300mgリコペン/kg体重/日のNOAELレベルを決定した、合成リコペンを使った以前の研究と一致する(Mellert 等, 2002)。合成リコピンに関する最近の研究は、ラットに14週間にわたって600mg/kg/日までリコピンを経口投与して実験し、明白な毒性の発見は全然示されなかった(Jonker 等, 2003)。
現在のラットにおける皮膚毒性研究で評価されている2000mg/kgの投与では、1件の死も起こらなかったし、死体解剖で体毒性の徴候も異常も全然認められなかった。投与2−4日後2匹の動物の処理部位で皮膚の毛細管の出血が認められたが、皮膚炎症の他の徴候は少しも認められなかった。従って、Sprague- Dawley系ラットにおけるNTOEの急性経口メディアン致死量(LD50)は2000mg/kg体重より高いことが判明した。
ウサギで実験したNTOEは、皮膚の炎症がないことが分かったが、中程度の眼の炎症の可能性があった。モルモットの皮膚でのNTOEの感作力の評価で、明確な紅斑は軽く、軽度の浮腫の形成は非常に軽いことが判明して、NTOEを中程度の感作物質と分類している。
NTOEはトマトからの6%のリコピンを含有しており、リコピンは強力な抗酸化物質であることが知られている(Di Mascio 等,1989;Miller等、2002)。 Stahl等(2001)はトマトペーストを食餌に加えると、紫外線に当って引起こされる光酸化ストレスの形成(紅斑によって測定される)を阻害することを示した。以前の論文は、試験管内で細胞外濃度2.6±0.6μMでニトリロトリアセテート鉄によって猿の緑色の腎臓線維芽細胞における酸化DNA損傷をリコピンは防止する、と報告した(Matos等、2000)。現在の研究で、NTOEが6種類の異なるバクテリアで突然変異誘発力があるか、NTOEの代謝活性を持つものと持たないものの両方で実験し、エームス試験によって最初に示された条件のもとでは突然変異誘発性でないことが判明した。実際、NTOEのより高い投与量(2500と5000/μg/プレート)は復帰突然変異体の数をコントロールレベル以下に減少した。ヒトにおけるリコペン(トマトピューレによる)の摂取は、生体外で過酸化水素による処理後リンパ球のDNA損傷を33―42%減少させることによって細胞の抗酸化力に影響を与えること、が明らかにされた(Riso 等、1999)。
リコピンを含む食品を1品目或いはそれ以上消費する全ての個人に対して行われた消費分析は、毎日の平均のリコペン摂取(90番目の百分位数)は8.2(15.7)mg/日であると推定されることを示している。このレベルのリコピン消費に有意に貢献している食品は (1)肉を含まない、トマトソースのスパゲティ、(2)トマトケチャップ、(3)生のすいか、(4)生のトマト で あった。これらの食品は比較的多い量のリコピン(30−170μg/g食品)を含んでいて、比較的高いレベル(8.3−36.6g/日)で消費され、また全体の中のかなりの割合の人(3.4−53.8%)によって消費されている。現在の分析におけるリコペンの毎日の推定摂取量はこれに匹敵し、特に‘トマトとトマトケチャップ’が基になっている。消費分析は、Schweitzer等(1999)によって報告されているリコペンの毎日の摂取量―5.08mg/日―より僅かに高い。これはリコピンを含んでいると知られているそれ以外の多くの食品を入れているためだろう;従って、これは毎日のリコピン摂取量より正確な推定値を表していることになる。

結論
NTOEは有意な急性毒性の影響を示さず、LD50は5000mg/kg体重より高かった。ラットにおける急性皮膚毒性(LD50)は、2000mg/kg体重より高いことが判明した。ラットにおける亜慢性毒性研究は、NOAELは4500mg/kg体重 より高いと結論した。ラットの亜慢性毒性研究から得られたNOAELに基づいて、ヒトにおけるNTOEの許容摂取量が計算出来る。同一種内の差に安全率10そして異種間の差に安全率10を利用すると、ヒトによるNTOEの摂取許容量45mg/kg/日は自明のこととみなされる。NTOEは、ウサギに皮膚炎症を引起こすことはないが、ウサギに中程度の眼の炎症とモルモットに中程度の感作力を誘発する。ホームス試験で実験された突然変異誘発性毒性は、NTOEは試験された最高の投与量(5000μg/プレート)で突然変異を誘発しないことを決定した。
トマトとトマト製品を何世紀にもわたって消費しており、動物研究では有意な経口毒性が発見されないことを考えると、6%のリコピンを含有しているトマトベースのオレオジンであるNTOEは、45mg/kg/日のレベルでヒトが消費するのは安全であると結論出来る。