
リサーチ
リコピンと乳癌
現在、進行中の各乳癌研究は、カロチノイド全般、特にリコピンの乳癌予防効果に関する有望なニュースを報告している。次の抜粋はこの方面で行われている刺激的な進歩を強調している。リコピンに富んだトマト抽出液ライコマートは、リコピン以外にもβ—カロチン、フィトエン、フィトフルエン等のカロチノイド、または抗酸化剤トコフェロールなど他数の癌予防植物栄養素の優れた食物源である。
予測的研究では、細胞の分化においてカロチノイドとビタミンE(α−トコフェロール)の抗酸化の性質にビタミンA(レチノール)の役割が加わると、後に起こる乳癌の危険を減少させることに関係があるという可能性を提起している。このネストにしたケースの対照研究は、レチノール、レチニールパルミテイト、α−カロチン、β−カロチン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、全カロチノイド、α−トコフェロール、γ−トコフェロールの血清と血漿の濃度と後に起こる乳癌の発達との関係を研究した。血清銀行に献血した婦人は、年齢、人種、更年期状態が似ており献血を行った日付も近かった。その分析はコーホートで行われ、後に乳癌となった295人の婦人と295人の対照者で行われた。
結果:対照群に比べて、β−カロチン、ルテイン、リコピン、全カロチンの中濃度は、後に乳癌にかかった婦人では低かったが、高濃度では、乳癌にかかる危険度自体が低かった。全般的に両方のコーホートにおいて他の微量栄養素に保護効果があることは認められるが、統計的な有意に達するものはなかった。これらの結果は、カロチノイドが乳癌の発達に対して保護する可能性を示している。
Sato R, Helzlsouer KJ, Alberg AJ, Hoffman SC, Norkus EP, and Comstock GW, カロチノイド、トコフェロール、レチノイド濃度と乳癌の危険度の予測的研究、Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention, 11:451‐7, 2002
血清微量栄養素と抗酸化レベルと乳癌の危険度間の相関を評価するため、症例対照研究において、新しく乳癌と診断された患者を処置する前に集め、ランダムに選ばれた対照者と比べた。血液サンプルは153人の乳癌患者と151人の対照者から集められた。それらは、レチノ—ル、α−トコフェロール、リコピン、α−とβ−カロチンに対してHPLCで分析され、全抗酸化状態に対してはTrolox相当の抗酸化試験で分析された。血清アルブミン、ビリルビン、尿酸レベルも又測定された。
結果:研究者は微量栄養素と乳癌危険度の減少の関連を発見し、β−カロチン、レチノール、ビリルビンの血清中のレベルと全抗酸化状態の増加は、乳癌の危険度の減少と関係していると結論している。
Ching S, Ingram D, Hahnel R, Beilby J, and Rossi E, 微量栄養素の血清濃度、抗酸化物、全抗酸化状態は症例対照研究における乳癌を予測する、Journal of Nutrition, 132:303?6,2002
多くの研究がトマトリコピンの抗癌活性について明らかにしてきたが、この作用の分子機構は知られていない。ヒトの乳癌と子宮癌の細胞増殖でのリコピン阻害は、G(1)期の細胞周期の進行の阻害と関係している。この研究で研究者は、細胞周期機構におけるリコピン仲介の変化を決定した。
結果:血清除去によるG(1)期の同調細胞をリコピン又は媒介物で処置し、5%血清で再刺激させた。実験の結果は、リコピンはサイクリンDレベルの減少及びサイクリンE−cdk2中のp27の蓄積を通して細胞周期の進行を阻害し、かくしてG(1)CDK活性の阻害に導くことを示している。
Nahum A, Hirsch K, Danilenko M, Watts CK, Prall OW, Levy J, and Sharoni Y, 乳癌と子宮癌の細胞における細胞周期進行のリコピン阻害は、サイクリンDレベルの減少とサイクリンE‐cdk2複合体でのp27(Kip)の蓄積に関係している、Oncogene, 20: 3428?36,2001
Tufts大学医学部で行われたこの研究で、エストロゲン受容体+とエストロゲン受容体−の両方のヒト乳癌細胞がβ−カロチン、カンタキサンチン、リコピン、レチノイドで処理された。
結果:β−カロチン、リコピン、レチノイドは有意に乳癌細胞の生長を減少させたが、カンタキサンチンは乳癌細胞の増殖に影響を与えなかった。すべての栄養素が+と−の両方のエストロゲン受容体細胞に等しく作用しないと言う事が分かった。このことは、エストロゲン受容体の状態はカロチノイドやレチノイド処理に乳癌細胞が対応するのに必須の要因ではないが重要な要因であることを示しており、更に乳癌細胞における全トランスレチノイン酸の作用形態がレチノイン酸受容体の誘導によっていないことを示している。生長阻害がその後に続くか同時に生じる他の機構的な経路も可能である。
Prakash P, Russell RM, and Krinsky NI, カロチノイド又はレチノイドで処理したエストロゲン‐依存性とエストロゲン‐非依存性ヒト乳癌細胞の試験管内での増殖阻害、Journal of Nutrition, 131:157-80, 2001
果物や野菜に見出される抗酸化微量栄養素は、癌に対して予防効果があるという事が多くの研究で示されている。血液抗酸化微量栄養素レベルと少数民族集団の癌との関連については情報が限られている。研究者は、β‐カロチン、レチノール、リコピン、α‐トコフェロール、γ‐トコフェロールの血漿レベルと、デトロイトにある大きな大学医学センターに見られるアフリカ系アメリカ人とコーカサス人の婦人の乳癌危険度との関係を評価するためパイロットケース対照研究を行った。患者の中には、まだ一度も癌に関した治療を受けたことがなく、対照者との年齢差が5年以内で、新しく浸潤乳癌と診断された婦人を含んでいる。微量栄養素の血漿レベルはHPLC(high‐pressure liquid chromatography) によって分析された。
結果:アフリカ系アメリカ婦人でリコピンレベルの高い人は乳癌の危険度が低く、血漿レチノールレベルの高い人は乳癌の危険度が高い。しかし、両方の場合相関関係は弱い。最も低いリコピンレベルの両方の人種の婦人で、コーカサス婦人の乳癌の危険度は0.76であり、一方アフリカ系アメリカ婦人の乳癌の危険度は2.29であった。この結果は、血漿リコピンレベルとアフリカ系アメリカ婦人の乳癌の間に相関関係がありうることを示している。しかしこれらの結果は、より広くより正確な研究によって確認されるべきである。
Simon MS, Djuric Z, Dunn B, Stephens D, Lababidi S, and Heilrun LK, 血漿抗酸化レベルと乳癌の危険度の評価:パイロットケース対照研究、Breast Journal, 6: 388?395, 2000
野菜や果物の消費は、多くの型の癌を予防するかも知れない。しかし研究証拠は乳癌に対しては有力ではない。270人の患者と270人の対照を含むケースコントロール研究で、カロチノイド、ルテイン、ゼアキサンチン、β‐クリプトキサンチン、リコピン、α‐カロチン、β‐カロチンが液体クロマトグラフィーを用いて保存された血清サンプルで測定された。
結果:β‐カロチン、ルテイン、α‐カロチン、β‐クリプトキサンチンが減少すると乳癌の危険度が明らかに増加した。乳癌の危険度は、β‐カロチンの最も低い血液レベルの被験者は、最も高い血液レベルの被験者に比べて約2倍であった。他のカロチノイドに関係した危険度もよく似ていた。これらの観察は、貧弱な食事やビタミン不足によるカロチノイドの低摂取は、乳癌の危険度の増加と関係が考えられ、著しい低摂取の人にとっては、公衆衛生に関連があるかもしれないという証拠を提供する。
Toniolo P, Van Kappel Al, Akhmedkhanov A, Ferrari P, Kato I, Shore RE, and Riboli E, 血清カロチノドと乳癌、American Journal of Epidemiology, 153:1142-7, 2001
