リサーチ

食餌によるリコピン摂取は膵臓癌の危険度の減少と関係がある

要約(文献の概要)
果物と野菜は膵臓癌の病因と密接に関連しているが、これらの食物類に含まれる植物化学物質の役割については、今日まで殆ど注目されてこなかった。我々は食餌のカロチノイドと膵臓癌の危険度の関連の可能性について研究した。1994年から1997年まで、組織学的に膵臓癌と確認された462人の患者とカナダの8州の母集団に基づく4721人の対照について患者対照研究が行われた。食餌の摂取は自己投与されるFFQによって評価された。特定のカロチノイドと全カロチノイドの摂取と膵臓癌の危険度の間の関係を評価するために、無条件ロジスティック回帰分析が使われ、統計上の有意性をもったテストはすべて2つの側面があった。年齢、州、BMI、喫煙、教育的達成、食餌の葉酸、エネルギー総摂取量に対して調整をした後、主としてトマトによって供給されるリコピンは、摂取量の最高四分位数と最低四分位数を比較した時、男性における膵臓癌の危険度が31%減少した。[オッズ比(OR)=0.69;95%CI:0.46−0.96;p=0.026傾向として] β−カロチン(OR=0.57;95%CI:0.32−0.99;p=0.016傾向として)と全カロチノイド(OR=0.58;95%CI:0.34−1.00;p=0.02傾向として)は煙草を吸わない習慣の人々に有意危険度が減少した。

全文(4188語)
著作権 American Institute of Nutrition 2005年3月

果物と野菜は膵臓癌の病因と密接に関連しているが、これらの食物類に含まれる植物化学物質の役割については、今日まで殆ど注目されてこなかった。我々は食餌のカロチノイドと膵臓癌の危険度の関連の可能性について研究した。1994年から1997年まで、組織学的に膵臓癌と確認された462人の患者とカナダの8州の母集団に基づく4721人の対照について患者対照研究が行われた。食餌の摂取は自己投与されるFFQによって評価され、特定のカロチノイドと全カロチノイドの摂取と膵臓癌の危険度の間の関係を評価するために、無条件ロジスティック回帰分析が使われた。統計上の有意性をもったテストはすべて2つの側面があった。年齢、州、BMI、喫煙、教育的達成、食餌の葉酸、エネルギー総摂取量に対して調整をした後、主としてトマトによって供給されるリコピンは、摂取量の最高四分位数と最低四分位数を比較した時、男性における膵臓癌の危険度が31%の減少した。[オッズ比(OR)=0.69;95%CI:0.46−0.96;p=0.026傾向として] β−カロチン(OR=0.57;95%CI:0.32−0.99;p=0.016傾向として)と全カロチノイド(OR=0.58;95%CI:0.34−1.00;p=0.02傾向として)は煙草を吸わない習慣の人々に有意に危険度が減少した。
膵臓癌は、カナダの男女両方の癌に関連した死亡者の4番目に高い原因である(1)。世界的に生存率は極めて低く、5年の生存率5%以下である(2)、そして診断から12ヶ月以内の疾患致命率は99%である(3)。いくつかの疫学的研究は、カロチノイドの主たる供給源である果物と野菜の高い消費は膵臓癌の予防に役割を果たすことを示した。実験に基づく研究からの根拠のある証拠によって、カロチノイドは抗酸化活性、免疫機能の強化、細隙結合細胞間伝達の刺激、解毒酵素の誘導、細胞増殖の阻害など、癌予防の事象を促進することが示された(4, 5)。α−カロチンは、前発癌物質の活性化因子であるシトクロムP?sub 450? 1A1を抑制することが示された(6)。β−カロチンは、核転写因子NF-kB活性の酸化還元調節によって癌細胞における成長抑制と前アポトーシス効果をコントロールすることができる(7)。リコピンは試験管内では、最も効率的な一重項の酸素消滅物質である(8); ルテインとゼアキサンチンは酸素の遊離基補足物質である(4)、一方β−クリプトキサンチンは癌抑制遺伝子であるRBとp53−関連遺伝子であるp73の発現を刺激する(9)。
カロチノイドの摂取は膵臓癌の危険度の減少と関係があると示唆している機械的な仮説があるにもかかわらず、今日までこの問題に取り組んだ疫学的研究は一つもなかった。この患者対照研究は、Canadian National Enhanced Cancer Surveillance System(NECSS)3の中で特定のカロチノイドと全カロチノイドの摂取と膵臓癌の危険度の関係を研究するために計画された。この研究は叉、食餌によるカロチノイドの摂取と膵臓癌の危険度の関係に喫煙が及ぼす影響の変化を調べた、何故なら巻きたばこの煙の中の遊離基が大半のカロチノイドの濃度を変えるからである(10)。

結果
研究対象の人々の選ばれた特色が示されている(表1)。男女両方に、患者と対照の間には年齢分布にかなりの差があり、若い対照被験者がより多かった(p<0.05);更に患者の方が多くの量のたばこを消費するようだった(p<0.01)。 癌の診断2年前に、両性においてBMIが増加して膵臓癌のより高い危険度があった(p<0.05)。男性では、患者の方が対照よりエネルギーの総摂取量が高いようだった(p<0.01)。
食餌におけるα−カロチンの主な食物供給源はニンジンとトマトであった。β−カロチンは主にジャガイモ、ニンジン、ホウレンソウから得られた。β−クリプトキサンチンはオレンジと果汁によって供給されたが、リコピンは主にトマト、トマトジュース、トマトソースからであった。ルテイン+ゼアキサンチンはブロッコリーと緑葉野菜からえられ、全カロチノイドは主としてジャガイモ、ニンジン、カンタロープから得られた。
特定のカロチノイドと全カロチノイド摂取による膵臓癌のORと対応する95%CIが要約されている(表2)。年齢、州、教育的達成、喫煙、BMI、葉酸、エネルギー総摂取量に対して調整をした後、摂取量の最高四分位数を最低四分位数と比較した時、男性における膵臓癌の危険度とリコピン摂取量の間の有意な逆相関関係が観察された(OR=0.69;95%CI:0.46−0.96;p=0.026傾向として)。α−カロチン、β−カロチン、β−クリプトキサンチン、ルテイン/ゼアキサンチン、全カロチノイドの摂取は膵臓癌の危険度とは関係がなかった。

論考
この母集団に基づいた患者対照研究は、男性におけるリコピンと膵臓癌の間の用量反応の逆相関関係を示した。たばこを吸わない男性においては、β−カロチンと全カロチノイドの摂取は膵臓癌の危険度の減少と有意に関係があった。我々が知っている限り、これは膵臓癌の危険度の評価において特定の食物カロチノイドの役割を調べるための最初の疫学的研究である。
以前の観察研究は、血清のリコピン濃度と膵臓癌の間の関係を評価して一致した結果を得た。血漿のリコピンレベルは、膵臓癌の患者では組合せの対照よりも有意に低いことが発見された(16)。ワシントン郡のコホート研究では、被験者は殆ど15年間追跡されたが、膵臓癌をもった被験者において組合せのコホート対照よりも有意に低い基線の血清リコピンレベルが記録された(17, 18)。より低い血清リコピンレベルが癌などいくつかの慢性疾患をもった個人に観察されたが、このことはリコピンの摂取はこれらの病気の発生、範囲或いは程度を減少させるということ、またはリコピンは酸化ストレスと炎症過程によって減少されるということを示している(19)。興味深いことに、試験管内での研究によって、リコピンは細隙結合伝達を阻害し(20)、第2相酵素を活性化させ(21)、シクロオキシゲナーゼ−2の合成をブロックすることによってエイコサノイド代謝を抑制し(22)、インスリン様成長因子1受容体の活性化を抑制することによって腫瘍細胞の成長を阻害する(23)。しかしながら、これらの推定上のメカニズムはまだ思索的なものであり、確証が必要である。
我々は、たばこを吸わない人々においてβ−カロチンと全カロチノイドの両方に関連して膵臓癌の危険度が42%減少した事を観察した、しかし過去もしくは現在の喫煙者においては個々のカロチノイド或いは全カロチノイドの摂取と癌危険度の関係を示す明白な証拠は見られなかった。たばこの煙にさらされると広範囲のβ−カロチン酸化を引起こす(24)。巻きたばこの喫煙はそれだけでプロビタミンAカロチノイドの循環濃度の低下に関連していると報告された。一般的に、食餌の摂取と他の人口統計学の要因に対して調整をした後でさえヘビースモーカーはたばこを吸わない人よりも、α−カロチン、β−カロチン、β−クリプトキサンチンの循環濃度が25%以上低い(10,25)。更に、喫煙によって誘発される酸化ストレスの結果起こる高い代謝回転率に反応して血漿のβ−カロチン濃度が低下することが報告された(26)。もしこの推定上の酸化メカニズムがβ−カロチンと喫煙の間の関係に影響することが証明されれば、この研究でたばこを吸わない男性においてのみ、同じような供給源から得られるβ−カロチンと全カロチノイドが膵臓癌の危険度を減少させる事と関係があるのかその理由を説明するのに役立つであろう。