
リサーチ
トマト抽出物の天然抗酸化物質は第1度高血圧症患者の血圧を下げる:
二重盲検、プラセボ−対照試験研究
Yechiel N. Engelhard, MD, Benny Gazer, MD, and Esther Paran, MD ベールシェバ、イスラエル二重盲検、プラセボ−対照試験研究
背景
高血圧(HT)の治療は心血管疾患の危険度を減少する事ができる。トマト抽出物は、遊離基を不活性化して粥状硬化症の進行を遅くする効果的な抗酸化物質として知られているリコピン、β−カロチン、ビタミンEのようなカロチノイドを含んでいる。我々の研究の目的は、トマト抽出物が第1度高血圧症の収縮期血圧と拡張期血圧、血清リポタンパク、血漿ホモシスチン及び酸化ストレスマーカーに及ぼす影響を評価する事であった。方法
この研究は、単純盲検、プラセボ−対照試験である。合併症を持たない、第1度高血圧症で血圧降下或いは脂質降下の薬物療法を必要としない、一次医療クリニックから募集された、31人の被験者によって試験は完了した。被験者は、4週間のプラセボの期間、次にトマト抽出物、250mgのライコマートによる8週間の処置期間、そして4週間のプラセボによる対照期間に参加した。結果
収縮期血圧は144(SE±1.1)から134 mm Hg(SE±2, p<.001)に下がり、拡張期血圧は87.4(SE±1.2)から83.4 mm Hg(SE±1.2, p<.05)まで下がった。プラセボの期間には血圧の変化は少しも示されなかった。脂質過剰酸化生成物マーカーであるチオバルビツール酸−反応物質は、4.58(SE±0.27)から3.81 nmol/mg(SE±0.32, p<.05)まで減少した。脂質パラメーターには有意の変化は見られなかった。結論
抗酸化物質に富んだトマト抽出物による短期間の処置は、薬物療法をうけたことがない第1度高血圧症患者の血圧を下げることが出来る。この処置の継続的な効果と心血管の危険因子に及ぼす長期の有益な効果はなおも証明される必要がある。(Am Heart J 2006; 151: 100.e1-100.eb)本態性高血圧症(HT)は、先進国における最も一般的な健康問題の一つである。本態性高血圧症の発達の正確で、根本的な病態生理学的メカニズムははっきりしていないけれども、それは心血管の病的状態と死に対する決定的な危険因子である。1 HTの発生病理における酸化ストレスの役割は、動物モデルとヒトに基づいている研究の両方によって示唆された。2 酸化ストレスは酸化窒素を不活性化することが出来るので、内皮依存の血管拡張を弱める。更に、低比重リポタンパクコレステロール(LDL-C)の酸化は、粥状硬化症の病理発生を促進し、それが心疾患罹患のもう一つの重要な危険因子である。
現在の国際的ガイドラインは、体重管理、食塩摂取の減少、アルコール消費の減少、そして多分初期のHTを予防し、治療する栄養学的の取り組み方としてカリウムの増加を推奨している。観察研究で、血圧(BP)と繊維、マグネシウム、カリウム、カルシウム、タンパク質に富んだ菜食料理との有意の相関関係が報告されている。3
一般的に、食餌の食品添加物の使用がここ数年人気を増してきた。いろいろな研究は、天然の抗酸化ビタミンが血管の働きを改善する力を証明した。トマト(Lycopersicon esculentum)は、トマト製品と共にα−トコフェロールとカロチノイド β−カロチン、フィトエン、フィトフルエンのような抗酸化物質の重要な食物源である。トマトは又、カロチノイドの中で最も強力な生体外での抗酸化物質であるリコピンの主要な食物源である。4 トマトジュースの消費は、血漿リコピンの有意の上昇と2型の糖尿病を持っている被験者において酸化に対するLDLの抵抗の増加を引き起こした。5 食餌による果物と野菜の補足は、血漿ビタミンの抗酸化レベルの上昇とBP値の減少と関連していた。6 Galley等7 は、抗酸化ビタミンの補足の後、収縮期血圧(SBP)の有意の減少と血清のβ−カロチン、α−トコフェロールと尿の亜硝酸塩のレベルの上昇を証明した。しかし、抗酸化物質の補足がBPに及ぼす影響についてのデータは不十分であり、特に第1度HT患者に関して不十分である。
我々の第一の仮説は、天然の抗酸化物質に富んでいるトマト抽出物を含んでいるカプセルで処置すると、第1度HT患者のBP値の減少を生じさせるだろ うという事であった。単純盲検、プラセボ−対照試験は、天然の抗酸化カロチ ノイドとビタミンに富んでいるトマト抽出物であるライコマートによる8週間の処置に対してBP、酸化ストレス、LDL酸化における変化を評価する試験研究として計画された。



結果
参加者
募集と割り当ては、2001年3月から8月の間に行われた。34人の参加者が試験に含まれ、そのうち31人(91.1%)はすべての研究段階を完了した:平均48歳(30〜73の範囲)の18人の男性と13人の女性。コンプライアンスの欠如(n=1)、めまい(n=1)と明確でない発疹(n=1)――両方とも最初のプラセボの期間――のために3人の参加者(8.9%)がやめた。平均のBMIは調査の課程で変わらなかった(基準で29.5±4.3、介入期間の終わりで29.2±3.4)(表I)。
血圧
基準で平均のSBPとDBP値は、それぞれ145.05±7.44と88.9±7.9 mm Hgであり、最初のプラセボ期間の終わりは、それぞれ144±5.99と87.44±6.8 mm Hgであった(表II、図1と2)。介入期間の終りには、SBPは134.02±10.83 mm Hg(P<.0001)まで減少し、DBPは83.38±6.6 mm Hg(P=.003)まで減少した。SBPの有意の減少はライコマート投与(−4.07±12.15 mm Hg, P=.038)6週目に達成された、そしてDBPの有意の減少は4週目に示された(−1.27±3.62 mm Hg, P=.029)。最終のプラセボ期間の終りには、SBPとDBPの両方ともそれぞれ143.98±6.41と85.16±7.44 mm Hgまでの増加がすべての被験者に観察された。これらの第1度HTと新たに診断された患者の基準24時間のABPMsは大半は高い〜正常の範囲にあった。基準の平均のSBPだけが高血圧の値に達した。これらの値は介入期間の終りには正常範囲へと有意の減少を示したが(137.44±11.78から131.41±14.04 mm Hg, P=.02)、全部の(日中と夜)のBPの平均にはわずかの減少しか見られなかった(表I)。
介入期間には、過酸化脂質生成物(AAPH誘発TBARS)は4.58±1.34から3.81±1.58 nmol/mg(P=.02)に低下した。血液の脂質、リポ蛋白、ホモシスチンは試験の課程の間有意に変化しなかった。ビタミンE-コレステロール比、ビタミンE,グルタチオン チオール、細胞GPxレベルにおける変化は有意ではなかった。
論考
この研究で、カロチノイドに富んだトマト抽出物の短期の、毎日の経口補足は有意にSBPとDBPを減少させ、過酸化脂質生成物のレベルを下げた。我々は特に、煙草を吸わない、最近第1度HTと診断された患者で、血圧降下、或いは脂質降下の薬物療法を受けていなくて、HTより他の有意の心血管危険因子を持っていない患者を選んだ。ビタミンや他の食品添加物を摂取していると報告した患者は試験から除外され、平均より健康を意識する参加者を募集することから起こる可能性のある偏りを避けた。我々は、2つのプラセボ期間、即ち介入の前と後の期間、を導入することによって、可能なプラセボ効果を明らかにした。最初のプラセボ期間にはBPは変化しなくて、最後のプラセボ期間にもとの基準値に上がった。我々の研究で観察されたBPの減少には、全コレステロール、リポタンパク質、トリグリセリドの血漿濃度とBMIの変化は伴わなかった。参加者は現在の食餌とライフスタイルを維持するよう忠告され、繰り返し注意された。したがって、我々の結果は、脂質或いは体重の減少、食餌の変化、或いは高められた身体活動に帰せられる可能性はない。
診療所訪問の間に測定されたBP値の信頼性を高めるために、被験者は24時間ABPMを受けた。新たに第1度HTと診断された患者において予期されるように、基準平均24時間ABPM値は軽度のHT範囲の境界線にあって、正常な夜間BP降下と高血圧平均の覚醒時収縮期レベルを保っていた。トマト抽出物での処置は、すべての日中の平均における降下を引き起こした;しかし正常レベル以上にわずかに上がったことと、比較的患者の数が少なかったために覚醒時SBPの変化だけが統計的に有意であった。
反応性酸化種のレベルの上昇は内皮機能を弱め、血管の拡張をそこない、それでHTの発生の一因となる。8-10 カロチノイドやビタミンEのような抗酸化ビタミンは、遊離基を捕捉し、反応性種のレベルを下げることが証明された、従って脂質膜とLDLに対する酸化損傷を妨げることが出来るのであろう。11
カロチノイドβ−カロチンはLDL粒子によって特別に運ばれるので、一重項酸素を抑制することが出来るのである。その後の取り込みで内皮の泡沫細胞によるLDLの酸化がアテロームの発生による冠状動脈性心疾患の知られている一因であるので、カロチノイドが冠状動脈性心疾患を防御する可能性があると示唆された。12 何人かの研究者は、ビタミンE、リコピン、β−カロチンのような抗酸化物質の投与、或いはそれらのそれぞれの血漿のレベルとHT、粥状硬化症、脳卒中の発生との関連を実証した。13-16
我々の考え方は、研究において観察されたBPの減少はトマト抽出物の抗酸化活性によるという事である。この考え方は測定されたLDL酸化生成物の減少の発見によって立証される、何故ならこの減少は恐らく抗酸化物媒介によるLDLの過酸化の阻害によるからである。生体外でのデータは、トマトリコピンがβ−カロチンとビタミンEと結びついてLDL酸化に対して及ぼす保護的効果を示している、17 そして生体内でのβ−カロチンの補足も又、この保護的効果を実証した。18
我々の結果は、ビタミン、自然製品、或いは食餌の修正が心血管の病的状態、BP、 抗酸化活性に及ぼす効果を調べているいくつかの研究の結果と一致する。19-23トマトジュースの摂取は、健康な被験者の血漿リコピンを増加させた19 そして2型糖尿病の患者のLDL酸化を減少させた。5 高血圧症患者の血圧降下の薬物療法に8週間の抗酸化物の補足をした後、彼等のSBPの有意の減少が発見された。β−カロチンとα−トコフェロールの循環レベルはすべての被験者において増加した、そして血液の酸化窒素と相互に関連する尿の亜硝酸塩は高血圧症グループで増加した。7 精選された母集団において、食餌による果物と野菜の摂取の増加は血漿の抗酸化濃度を上昇させた。23 DASH試験で、食餌によって果物と野菜を8週間増加させると、対照の食餌よりもSBPとDBPをそれぞれ2.8と1.1 mm Hg減少させた。3 果物と野菜の消費を増やすよう勧められた被験者では、SBPとDBPが対照群よりも下がった。
現在の研究では、トマト抽出物のカプセルが使われた。これらのカプセルは天然のトマト抽出物を含んでいるけれども、これらのカプセルのさまざまな抗酸化物の濃度は知られており標準化されていて、すべての被験者に標準の介入を供給する。治療の標準化は、患者が治療法に従っているかどうか研究者がよりよくモニター出来るようにし、より正確な投与−反応関係を確立出来るようにする。投与の容易さと副作用のないことが、我々の研究で使われるトマト抽出物のカプセルのような天然の製品の主要な特色である。一つには血圧降下の薬物療法の副作用のために治療法に従わないことが、高血圧症患者の治療失敗の重要な原因であることはよく知られている。24
しかしながら、いくつかの研究は、抗酸化物質の消費と心血管の病的状態と死との間の有益な相関関係を実証することが出来なかった。25-29 これらの研究は、BPの変化を評価するように計画されたのではなくて、危険度の高い母集団の中で行われた主として二次予防の研究であった。
我々の試験研究の肯定的結果は勇気づけるものである。しかしながら、我々の比較的小さい研究母集団は薬物療法を受けたことがない第1度HTの危険度の低い患者から構成されていた。我々の研究における療法の課程は比較的短かかった、それでトマト抽出物の有益な効果が長い投与で続くかどうか明らかでない。我々の試験における治療は、一次治療的介入であった、それで血管の損傷が軽いか全然ない、これらの危険度の低い患者は、より高い度のHTやより進んだ血管の病気を持っていて、複数の薬物療法を受けている患者よりも介入にもっと反応するであろうと考えるのが妥当である。我々の試験研究で達成されたような第1度HTの範囲から高い−正常の範囲のBPにおける減少は臨床的に有意である。患者を正常血圧の状態に維持し、より高い度のHTへ進行するのを防ぐことは、血圧降下の薬物療法の必要を遅らせるか、或いは避けることさえ出来るだろう。もっと大きくて、もっと多様性のある母集団を使って、もっと長い期間血圧降下の効果を調べる研究によって、血圧降下物質としてこのトマト抽出物の役割を確立し、定義する事が必要とされる。
